目次
はじめに
こんにちは、NUMです。
今年もあと少しで終わりですね。年を取る毎に1年があっという間に過ぎていく気がします。
Processingの制作を去年から始めて、なんだかんだ続いていることにビックリしています。
続けていくうちに自分で出来る事が増えていき、自分が成長しているみたいで嬉しいですし、作りたいアイデアも自然と湧いてきます。
暇な時は大体Processingの事を考えているくらいに依存症です。笑
今回も年末の制作活動の振り返りをやっていこうと思います。
振り返りはお気に入りの作品についてや人生初の展示を行った感想を書いていきます。
1月
1月は円充填のプログラムで遊んでいました。
ダニエル・シフマン先生のCircle packingの動画を見て勉強していました。
その時に細胞の発生っぽくできないかと思って作りました。
なかなかの再現度で自信ありの作品です笑
円充填アルゴリズムは全く理解できないまま使って遊んでいました。
同じものを自分で一から実装してみると、理解が深まって他の作品にも応用できるようになりました。
「車輪の再発明」はあまり良い事と言われていないですが、僕は物事を理解するには良い手法だと思います。
2月
2月はアーティストとしての名刺を作りました。
ギャラリーに行くと作家さんの素敵な名刺が置いてありますよね。
自分もそういう名刺が欲しかったので作ってみました。
名刺はAlbatro Designさんに依頼させていただきました。
以前製作していただいた活版印刷のクオリティが素晴らしく、自分の名刺は絶対ここに作ってもらう!と決めていました。
活版印刷した元データは全てProcessingで製作したものです。
表面はNUMのトレードマーク、裏面は四角形分割を反応拡散アルゴリズムで拡散させたデザインです。
シンプルなデザインが好きなので、出来る限り文字も少なめにして
分厚めの紙を使用して活版印刷の立体感を強調し、名刺を手に取ってもらった方に印象を与えられるように作りました。
名刺を作るなら是非、Albatro Designさんの素晴らしさを体感してほしいです。
3月
デコさんの記事で「作って動かすALIFE」という書籍を知って即買いしました。
オライリーが出版している人工生命の実装ができる書籍です。
製作したのは「SCLモデル」と呼ばれるセルオートマトンの一種です。
SCLモデルとはオートポイエーシスの概念である「自らを生成し、維持できる生命の最小単位」を構造的に理解しやすくしたモデルのことだそうです。
以下三つがSCLモデルで重要なポイントだと考えています。
生命は環境と相互作用をする
相互作用の中で個を維持する
個を維持しながらも構造が変化する
黄丸を青色の線が囲んでいくことで「個」を形成していき、黄丸は膜外の緑丸と相互作用しながら、「個」の構造が変化していくイメージです。
(黄丸:触媒分子、緑丸:基質分子、青四角:膜分子)
元々pythonのソースだったものをProcessingに書き換えたのでちょっと手間がかかりましたが、新しい言語を学ぶ良い機会でした。
生物、プログラム関連が好きな方はハマる書籍かもしれないです。
4月
6月は様々なバリエーションのタイリングを作る企画で「タイリングチャレンジ」をやっていました。
参考にした書籍は僕のバイブル「数学から創る ジェネラティブアート」です。
僕は数学が大の苦手なので、この書籍を読み進めるのにかなり苦労しました。
数学的な説明が細かく説明されつつ、簡単な図形から複雑なものまで作り方が紹介されています。
数学の知識が無さすぎた僕が重宝したのが「ヨビノリたくみ」さんの動画でした。
数学が苦手だけど、理解しながら楽しく学びたい人にはめっちゃオススメ。
この書籍を読む時に意識したのは、とにかく理解に徹することでした。
僕は理解のスピードが遅いので時間がかかりましたが、噛み砕いて作品を作っていくと
面白いことに自分なりのアレンジができるようになりました。
特に難しかったペンローズ・タイルは記事にして、物凄く細かい単位まで噛み砕いて理解できるようにしました。(ペンローズ・タイルの実装)
6月の経験が今の制作にとても繋がっていると思います。
僕はこの時、数学を理解しながら制作することが物凄く楽しいということに気づきました。
5月
5月は人生初の展示を岩田商店さんで開催させていただきました。
岩田商店さんは三重県のいなべ市にある素敵なギャラリーです。
僕は岩田商店さんの2Fのスペースで展示をさせていただきました。
スペースは3畳ほどで、作家が自由に展示スペースを使わせてもらえるのが良い点だと思いました。
壁には絵とキャプション、棚にはジェネラティブアートの説明、名刺、感想ノートを展示レイアウトにしました。
また「在廊」も2日間させていただきました。
お客さんにジェネラティブアートの説明をしつつ、自分の作品の思いを伝えることにとても苦戦しました。
お客さんはプログラムについて何も知らない方が多いので、細かい質問してきたらコードでどのように絵を製作しているか説明をしました。
また、一人でじっくり絵を見たいという方も多いと思うのでお客さんに話しかけるタイミングも結構難しかったです。
絵は人によって感じ方が違って、自分の思いが100%伝わるわけではない。
お客さんと会話しながら少しづつ作品について知ってもらうくらいがちょうど良いと感じた。
別にアートに限ったことじゃなくて、相手に興味を持って接したら向こうも自ずと興味を持ってくれることと同じだと思う。
ジェネラティブアートはPCで黙々と製作をしていることが多いのでお客さんとの対話はとても新鮮で学びが多かったです。
岩田商店さんには貴重な経験をさせていただき、本当に感謝しています。
また、同じ時期に展示していた作家さんとも交流できて楽しく展示ができました。
ありがとうございます。
2F 石ぬい(石ころのぬいぐるみ) 小栗里奈さん
2F グラフィティライター Oniraku さん(マブダチ製作仲間)
6月
6月は油絵の質感を研究していました。
とにかく油絵を拡大して観察し、自分なりの認識をアルゴリズム化して、
プログラムに変換してみました。
出来上がった質感は完璧な油絵には程遠いですが、厚みのある自分好みの質感に出来上がりました。記事「Processing 油絵の質感表現」をチェックしてみてください。
この時作ったプログラムは油絵の質感を点描画で表現する関数です。
つまり、point関数と置き換えができます。
この時期から絵を点で描くようになりました。
どうすれば指定のポイント(位置)を取得できるかを常に考える必要があるので
個人的にですが、点で絵を描くようになってからProcessingの上達が早くなったと思います。
ちなみに点描画で絵を描くと処理時間がとてつもなく長いのでアルゴリズムの改善の余地があります。
この頃から処理時間の高速化についても考えるようになりました。
もしプログラムの高速化について詳しい方がいたらぜひコメントで教えていただけると嬉しいです!
7月
夏は人生初のTシャツ製作をしました。記事「ProcessingでTシャツ制作」
夏らしい色合い、シンプル幾何学模様というテーマでデザインを考える事に
苦労しました。
今回は全部自分が作りたいものをデザインしていますが、お客さんからの要望だったら
もっと抽象的なイメージから具体的なデザインに落とし込まないといけないので
デザイナーさんの仕事は大変ですね。
こういう作業がデザインのお仕事なのかなと思いました。
でも自分のイメージ通りのTシャツが作れてとても満足です。
ProcessingとFashionの可能性を探れた気がします。
8月
8月はfxhashでNFTアートを出品してみました。
fxhashは出品したNFTアートの表現をmintされた作品毎に固有なものにする必要があります。そのため、randomSeed関数、noiseSeed関数を使用してランダムな値を固定させてなけらばいけません。
固定化できたら、仮想通貨と連携させることで出品完了です。
少ないながらもmintしていただいて自分の作品が売れたことに感謝しています。
僕はNFTはあまり継続して続かなかったですが、ジェネラティブアートが国内でも普及していくにはNFTが必ず必要な要素だと思っています。
NFTアートという大きな枠組みから、ジェネラティブアートというニッチなジャンルに
入っていくという流れが起こる可能性もあると思います。
日本国内で活躍されているNFTジェネラティブアーティストの方々を引き続き応援していきたいと思います。
9月
9月は手書きにチャレンジしました。
この時期は、鉛筆デッサンやアクリル絵の具で絵を描いていました。
どうせ書くならProcessingで出力した絵をデッサンしたら面白いなと思ったので
自分で勝手にgenerativePaint(ジェネラティブ・ペイント)と呼んでいました 笑
僕は絵の具の盛り上がった凹凸の質感が好きで、それを簡単に取り入れることはできないかと考えていました。
手軽に取り入れる方法としてモデリングペーストという画材を使いました。
アクリル樹脂と大理石の粉末からできた下地材です。
僕はアクリル絵の具とこれを混ぜて使いました。
求めていた立体感が出来上がり、どストライクの作品ができました。
アナログでの制作はジェネラティブアートの制作にはあまり活きないかと思いました。しかし、アイデアスケッチの質が良くなり、明暗の構造をアルゴリズム化するきっかけになったりとアナログ、デジタル両方の画力が向上することに繋がりました。
鉛筆デッサンの影の付け方や、絵の具のグラデーションの付け方など全く手法が分からなかったので、知人のアーティスト(Oniraku)に手描きの方法を教えてもらいました。
Onirakuはグラフィティをモチーフとした作品を制作していています。
白黒をベースとしたキャラクタを描き、独特の世界観、彼の描く絵はセンスがめちゃくちゃあります。
僕もファンの一人であり、制作仲間でもあります。
アートについて彼から多くを教わり、ジェネラティブアート以外のアート分野について
話せる貴重な友人です。
同じ志を持つ友は心の支えにもなり、モチベーションにも繋がります。
10月
10月はグループ展に参加しました。
場所は名古屋の栄にある#1010というギャラリーで行われました。
このグループ展はジャンルレスなので色んなジャンルの作家が参加されていました。
ジェネラティブアート枠は予想していた通り僕だけでした笑
展示風景
グループ展では在廊時に作家さんも頻繁に遊びに来られたりと、作家同士だけでなく、お客さんとも交流が活発に行われて賑やかな展示でした。
在廊時は販売も担当して、ふらっとギャラリーに立ち寄ったお客さんが作品を購入するという珍しい出来事がありました。
お客さんに購入した理由を聞いてみると、「なんだか、素敵な作品だから。」という回答で
した。
感覚的に好きな絵ってそう簡単には出会えないと思うので、作家からすれば一番嬉しい回答じゃないかなと思いますね。
グループ展の作品はどれも素敵な作品ばかりで、皆さん固有の特徴が作品にありました。
こういう特徴は作品の個性であり、作家の芸術的価値観だと思っています。
これを突き詰めれば自ずと自分らしさが出てくると思います。
グループ展は沢山の芸術的価値観に触れられる貴重な場だと思います。
今後も定期的に参加させて頂こうと思います。
#1010 さん貴重な体験をさせていただきありがとうございました。
一緒に参加された作家さんもお話しさせていただきありがとうございました。
名刺と作品
11月
11月はテーマ性のある作品を制作していました。
テーマは「宇宙旅行」です。
赤、青、黄の球たちが宇宙旅行に行って降り立った惑星を探索するという内容になっています。
作品名は降り立った惑星名が付けられています。
NASAのinstagramアカウントを見ていただけるとわかると思いますが
とにかくめっちゃジェネラティブアートな投稿が多いんですよね。
自分の作品に取り入れてみたら絶対面白いと思いました。
「宇宙旅行」というテーマを通して作品を見てみると
球がなんだか生き物のように見えてきて愛着が湧いてきたりもするんですよね。
実は11月の作品は明暗を使用した立体的な表現を多いです。
これは9月の手描きの練習がとても活きています。(他にも構図の勉強)
この作品を作っていて、関係無いと思っていた分野が実は活きてくる事に感動しました。
以下は惑星別の作品です。
12月
12月は季節感のあるクリスマスをテーマとした作品ですね。
この作品は3弾構成となっています。
1つ目はクリスマスツリーに雪が付いている所を表現しています。
2つ目はクリスマスツリーの飾りを球で表現しています。
3つ目はキャンバス全体をクリスマスプレゼントの箱に見立てて、箱のリボンを右下の十字で表現しています。
個人的に一番気に入っているところは、球が転がった軌跡を点描で表現できたことです。
こうすると作品に動きが出て、球たちが雪の上で遊んでいるような表現ができました。
まとめ
今年も沢山の作品を作ることができ、新しい経験をさせていただきました。
特に展示を年内で2回経験できたことは自信にも繋がりました。
在廊をしてみると人とのリアルな繋がりも重要だと実感しました。
今年は制作活動の方針がある程度固まった思っています。
やはり僕は実際に物を制作して、リアルな場所で展示したいと展示をしてみて感じました。
僕はやっぱり芸術を目で見て、空間ごと感じることが特に好きです。
2023年もずっと制作は続けていき展示の機会もどんどん増やしていきますので、
国内のジェネラティブアートをどんどん盛り上げていきたいと考えています。
国内のジェネラティブアーティストの方々も引き続き共に制作をしながら交流できれば嬉しいです!
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